犬の僧帽弁閉鎖不全症に対する治療
僧帽弁閉鎖不全症に関していろいろ書いてきましたが「治療」に関して今回は書きます。
治療の前にステージ分類があることはご存知ですか?
A 心臓病はない、リスクある(品種や家系)
B1 心臓病がある、症状はなく、心臓は大きくない
B2 心臓病がある、症状はなく、心臓は大きい
C 心臓病による症状がある
D 心臓病による症状があり、一般的な治療では改善しない
ACVIM consensus statementという治療指針があり、その分類と治療方針を参考に治療しますが
その分類を簡単にすると、こうなります。
「治療」することによる「延命効果」が言われるのは
B2「心臓病による症状はない、心臓が大きい」
からになります。
今回はこのステージB2についてのみ深堀します。
相変わらずマニアックですみません。
B2に入る基準値は以下の4点です。
■心雑音の大きさがLevine3という大きさ以上
■超音波検査の LA/Ao 1.6以上、LVIDDN 1.7以上
■レントゲン検査の心臓のサイズ10.5以上(品種による)
最近は認定医の先生も増えてきたので、循環器認定医に必ず測ってもらうことをお勧めします。
このB2というのが曲者で。
心臓が少し大きくなったね~から、デカ!ヤバ!そろそろ苦しいでしょ!
まで幅があります。
なので、治療指針もなかなか流動的です。
治療の選択肢として
- ピモベンダン
- ACE阻害薬
- βブロッカー
- Caチャンネルブロッカー
- スピロノラクトン
- 咳止め
- 手術
が挙げられていますが、寿命を延ばします!という確固たる根拠がある薬はピモベンダンのみです
なのでB2に入ったタイミングの少し大きくなってきたねからピモベンダンを使っていきます
ですが、そのままずっと過ごせる子は少なくて、1~3年で次のステージに進む子が大半です。
進んできてしまうとやっぱりデカ!ヤバ!そろそろ苦しいでしょ!になっていくので、その他の薬を検討します。
ただ、その他の薬は有効性・安全性など治療効果については様々な意見があり、薬の作用から考えても一律で使った方が良いという指針はありません。血圧や心拍数腎臓の機能やその子の性格
なども加味して調整する形ですね。
その中で、咳だけが困るんですっていう場合には咳止めを使っていきます。
あくまでも肺水腫ではない咳の場合です。
心臓外科手術は基本的には症状が出てしまった子に推奨されます。
なので、ステージCは比較的強く推奨されています。
ですが、B2のなかでもデカ!ヤバ!そろそろ苦しいでしょ!が余りにも若い年齢だったり
そろそろ苦しいでしょのカウントダウン
が見えているような状態には、心臓外科手術も勧めます。
外科治療はまた、別の機会に詳しく書きますが正しくリスクとベネフィットを理解した上で挑むべき手術です。
ですが、このステージB2から推奨される理由としては
ステージCに入るとき=肺水腫を起こしたとき
であり、とある救急病院のデータによると
肺水腫で来院した内の3割が亡くなったと。
なので、肺水腫にそろそろなってしまいそうな状態のB2の子は、手術も推奨されます。
ただ、手術は行っている施設が非常に限られているので選択肢としては誰でも選べるものではないと思います。
僧帽弁閉鎖不全症のおきた状態の心臓と僧帽弁閉鎖不全症に対する手術に関してはリンクを参照して下さい。
上野の森どうぶつ病院
獣医循環器認定医
獣医心臓血管外科医
諌山でした。
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