犬の僧帽弁閉鎖不全症に対する外科治療(心臓外科)

獣医循環器認定医 諌山です。
当院でもできます。僧帽弁閉鎖不全症に対する心臓外科

 

突然の話題でなんじゃらほいだと思いますが、犬の心臓手術は大きく分けて二つあります。

人工心肺装置使用しない手術(動脈管開存症・フィラリア症・バルーン弁拡張術など)

人工心肺装置使用する手術(僧帽弁閉鎖不全症・心室中隔欠損症など)

 

人工心肺装置はいろいろな医療ドラマでも出てきますが、最近だとコロナでECMO(エクモ)という肺の代わりをしてくれる装置の話題が出てきています。要はアレです。
自分の肺や心臓の代わりに酸素を血液に取り込んでくれる装置なので、

肺の手前(静脈)から血液を抜いて人工心肺に送り酸素交換をしてから心臓の先(動脈)へポンプで心臓のようにギュッと送り出す装置です。

3A7B08B9-8CC4-47D0-B055-AF7441035A0Bこの機械に繋いでいる間は心臓と肺は働かなくても大丈夫ということです。
そのため、心臓の中の手術(開心手術)をするには必ず人工心肺装置が必要になるのです

 

 

 

ええ。ありますよ。当院に人工心肺装置

 

びっくりしたでしょ?

当院のコンセプトは「お散歩ついでに行く病院」のはずなんですけどね

お散歩ついでに人工心肺装置のあるとこに行くって変な話ですよね。笑

 

 

ヒトでは割と心臓の手術受けた人にお会いしますが、動物では開心手術は世界でまだまだ一握り・・・どころか日本が世界一。

名古屋の茶屋が坂動物病院先代院長の金本先生が門をあけ

横浜のJASMINE動物循環器病センターの上地先生が開拓し世界へ広げている技術です。

日本は現在犬の心臓外科手術最先端の国であり、施設も日本全国で10ヶ所くらいになってきて、日本から学んだ先生が他の国でもやっている・・・そんな技術です。

 

施設が少ない理由は人工心肺装置を使うことに対する合併症の発生率の高さ。

ヒトに比べて費用や輸血の制限が強く、さらに凝固異常による出血や血栓症の問題、呼吸器の問題を起こしてしまうので、昔からヒトのマネをして手術は行われていましたが、半分以上が亡くなるような手術でした。

現在はヒトと動物の違いが分かってきたものの、10%位は手術の合併症で亡くなる手術です。

 

上野の森どうぶつ病院も、様々なご縁があり僧帽弁閉鎖不全症に対する心臓外科治療が出来るようになりました。

「先生に治して欲しかった」 以前そう言われた言葉に

「ごめんなさい」としか言えませんでした。

今は選択肢を増やせました。

 

基本的には、心臓外科のご提案の際にはジャスミン動物循環器病センターに紹介することを第一とさせていただいています。

世界一が近くにあるんですからね。行けるなら行くべきです。

ですが、さまざまな事情により行くことができない場合には当院で行うという選択肢をご提案しています。

 

また、内科治療も多くの選択肢を提案できるように努力しています。

「内科管理が難しいけど、手術はしない。でもどうにかしてくれ」

なんて紹介も受けています。寿命に関して厳しいことは言いますが、一般的な寿命や生活レベルよりも良い状態で過ごせるよう提案できるようにしています。

引き出しはいっぱい持ってますよ!!

 

ですが内科の目標は「悪化していく心臓といかに上手に付き合って平穏な生活を続けられるか」が最大の目標です。

イメージとしては右肩下りのカーブを緩やかにすること

 

外科治療は「寿命が尽きるまで、心臓では困らないようにする」が目標です。

イメージとしては下がってるカーブをベキっと折り曲げて真っ直ぐに直すこと

起死回生、一発逆転が狙えるのはメリットです。

 

 

僧帽弁閉鎖不全症から肺水腫になるとステージCに入りますが、このステージは9ヶ月間で約半数が亡くなります

肺水腫になったタイミングで約20−30%亡くなるとも言われています。

ただ、その日がいつ来るのかは誰も知りません。
我々循環器の先生たちは「これはやばい」と思うことがあっても「これは肺水腫に○○日後になる」とまでは言えません。

きっと「肺水腫になる日」が分かっていれば、その直前に手術することが最良の選択肢なんでしょう。

そしたら手術を受ける方が死亡リスクは10%と肺水腫の20%より低いですからね。

ですが、残念ながら肺水腫になる日はわかりません

 

いつか来る、お別れを覚悟しながら日々を精一杯過ごすのか

一発逆転を狙って亡くなるリスクを取りに行くのか

単純な比較の問題ではないと思います。

 

どっちを取っても、亡くなった日には後悔でいっぱいになると思います。
私も、私の愛犬で後悔を経験しています。(詳しくは聞かないでくださいね)

 

僧帽弁閉鎖不全症は、手術しないと治らない病気です

ですが、手術が最良の選択肢ではない場合も多いと思います

何がこの子にとって最善なんだろう?

それは各家庭により異なります

思っていること、聞いたこと、実際は異なることも多いと思います

「この子の場合どうなのか?」きちんと相談しましょう

 

 

 

これまで技術を教えて下さった心臓外科医の松村先生、宮本先生、技師の五十嵐さんにはこの場をお借りして感謝申し上げます。そしてこの手術は最低5人の協力がないとできない手術です。協力してくださる皆様に出会えたことに感謝です。

 

 

現在、当院で受け入れている心臓血管外科・胸部外科手術は下記の通りです

・僧帽弁閉鎖不全症

・肺動脈狭窄症

・中隔欠損症

・動脈管開存症

・心膜切除

・漏斗胸

 

各々リスクや適応が異なります。ぜひご相談ください。

 

 

久々に真面目な文章書きました。

途中でついふざけてしまいそうになりますね。

この写真は私の血管用の遮断鉗子。

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萌えるでしょ?

獣医循環器認定医 諌山紀子でした。

 

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上野の森どうぶつ病院
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