診療紹介
動脈管開存症 <先天性心臓病>
こんにちは 上野の森どうぶつ病院の 獣医循環器認定医 諌山です。 心臓病のなかでも、子犬・子猫の心臓病について紹介します。 子犬・子猫の心臓病とは生まれた時に既にある病気で、最近ではブリーダーさんやペットショップであらかじめ健診されるため、あまり見なくなりました。 しかし、その中でも断トツ多いのがこれ動脈管開存症 ダントツ多い理由は、生まれる前にはみんなこの「動脈管」があるからです。 そうです、これをご覧のあなたにもありました! 生まれる前、羊水の中では肺呼吸をしないため、肺に行く血管を迂回して血液は流れています。 肺呼吸をする場合 全身 → 右の心臓 → 肺 → 左の心臓 → 全身 胎児は 全身 → 右の心臓 → 迂回路 → →全身 その迂回路が「動脈管」という血管です。 犬猫だけではなく、哺乳類みんな持って生まれます。 生まれて「おぎゃー」した瞬間から、肺で呼吸をし始めます。 そのため、迂回路が必要なくなり、生まれた直後から自分で迂回路を閉じているんです。 そうです、あなたも自分で閉じたんですよ! 生命の神秘ですね。 迂回路を閉じるのが中途半端で終わってしまうと、そこに血液が流れてしまいます。 血液が流れると、本来の肺呼吸をしている血液の流れとは別の流れが起きてしまいます。 これを「動脈管開存症」といいます。 この心臓病は心臓病の中で一番よく見ますが、多くの場合は根治出来る心臓病です。 なんといっても迂回路になってる動脈管を 閉じてしまえばいい( ゚Д゚ ) だけだからです。 そんな簡単に言ったら怒られますが、動脈管を閉じることでこの病気による心配は一生無くなります。 閉じる方法は2つ 動脈管の外から縛って閉じる 動脈管結紮術 動脈管の中に詰め物をする 動脈管閉塞術 両方利点欠点ありますが、後者は特別な放射線装置と特殊な器具と体重制限があるので 動脈管結紮術を当院では行っています。 ここ最近で当院で手術を行ったのはこの子。 二か月のシェルティー ブリーダーさんからやってきました。 手術をすぐにおこなって元気になって 里親募集していましたが、結局看護師さんが惚れ込んで一番手で手を挙げました。 よく一緒に出勤してますので、声かけてください。 動脈管結紮術の利点はどんな体重の子でもできます。 当院では1キロ以下でも行っています。 欠点は胸を開けての手術になることです。 入院期間はそんなに長くないです。 子犬の回復力って驚異的で、術後2日で帰った子もいます。 心臓の手術なのに!? ですか? 心臓の手術なのに。です。 それだけこの病気は治ってしまえば普通の生活が送れる病気なんです。 もちろん、一週間入院する子もいますし命の危険もある手術です。 でも治した場合は以降一生問題ありません。 冒頭でもお伝えしましたが、最近はペットショップやブリーダーさんで予め健康診断されてこの病気の子はあまり見なくなりました。 でも、残念ながら選別されているだけで、生まれているけど治療までたどり着かない子がいるだけなんです。 治せば普通に暮らせるのに・・・ 当院では保護団体さんやブリーダーさんからの心臓病の相談・治療・手術も積極的に受け入れております。…
異物にご用心!! 嘔吐、消化管閉塞を起こす‟ひも状異物”
こんにちは 上野の森どうぶつ病院 院長の内村です。 立秋を過ぎ、少し涼しい日も見られるようになってきましたが、 まだまだ暑い日が続きますので、熱中症などにはお気を付けください。 上野の森の真っ白コンビは、涼しい病院の中でぬくぬくしていました。 この時期、夏祭りなども各地で行われるせいか、よくある問い合わせが 「異物を食べましたが、大丈夫でしょうか?」 というものです。 中でも多いのは、 ・焼き鳥の串 ・〇ンタッキーフライドチキンの骨 ・乾燥剤 ・観葉植物などの植物 ・玉ねぎの入った料理 ・おもちゃ などなど。かなり注意していても、盗食されることもあります。 「え?、なんでこんなもの飲み込むの」 ということを経験した方は少なくないと思います。 えー、恥ずかしながら、うちでも猫に玉ねぎとニラの味噌汁を盗食され、ワイン色のおしっこが出たことがあります。 (玉ねぎ中毒による溶血性貧血) 植物や乾燥剤などは、成分によっては問題ないものもありますが、楽観視せずにその都度動物病院にお問い合わせください。 一般にはあまり認知されていません?が、獣医が一番嫌がる異物が、題名にも上がっている『ひも状異物』です。 裁縫用の糸、あやとりの紐、長い輪ゴムなどが代表的になります。 猫ちゃんがまた、これらを好んで咬み咬みするんですよねー。 当院で手術した異物除去ででてきたものを紹介します。 *手術の写真があります。ご注意ください* ワンちゃんから、こちら このでてきたものを確認するために水で洗ってみました。 おもちゃのひも、おもちゃのスポンジ、犬や人の毛が絡まってひも状に連なって異物になったものです。 色々なものが絡まったもので、珍しいひも状異物のパターンといえるかもしれません。 猫ちゃんでは、こちら かなり大きな塊がでてきて驚きました。 飼い主様が飲んだと思っていたのは、左端の赤いビニール紐だったのですが、それ以上のものが入っていました。 こちらも水で洗って確認です。 靴紐?パーカーの紐?のようなものと、毛などが絡まり合っていました。 これがお腹の中にあったら、気持ち悪くて吐きたくなりそうですね。 ひも状異物の一番怖いところは、単純な閉塞を起こして、食べ物がつまるだけではなく、 紐に沿って腸が縮こまることにより、血液がまわらなくなり、壊死を起こしたり、腸が裂けることもあることです。 おもちゃなどは、遊び終わりの時間を作ってあげて、飲み込まないように注意してあげてください。 シラタキ「え、玉ねぎなんて食べてないし、洋服のファーなんて、食べないよ。」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 上野の森どうぶつ病院 http://www.uenonomoriah.com/ 住所:東京都台東区谷中1-5-11 ディアプラザ根津B1F TEL:03-5832-9991 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
咳 ~心臓が原因?呼吸器が原因?~
こんにちは 上野の森どうぶつ病院 の諌山です。 心臓病が専門なのに、心臓病のブログは全然書いていませんでした。 専門は余計なことまで書いてしまいそうなんですよね・・・でも身近なところから心臓病について書いていこうと思います。 というのも最近「咳」についてのセカンドオピニオンが多いからです。 ヒトは疲れやすいとかダルイとか息切れが動悸がするという事がきっかけで心臓の異常が見つかります。 犬や猫の場合は喋ってくれないですから 「咳が出る、息苦しそう」 といった症状で病気が見つかるケースも多くあります。 ただ、咳=心臓病ではありません。 また、心臓が悪い=咳をするでもありません。 「咳が出ている、心臓が悪いんじゃないか」 「咳が出ているから心臓の薬を飲み始めたが治らない」 こういった問い合わせをよく受けます。 本当に心臓からの咳ですか? 心臓が原因での咳は、割と進行した状態の心臓です。 肺に水が溜まったり (肺水腫) 心臓が大きくて気管を押し上げて刺激したり (気管挙上) フィラリア症にかかっていたり ・・・ごめんなさい、レントゲンで一目瞭然な写真がなかったです。 こういった原因で心臓の咳は起こります。 では他に起こる咳は何が原因でしょうか? ・ケンネルコフ (犬の風邪) ・気管や気管支虚脱 (中高齢の小型犬に多い) ・肺炎 ・腫瘍 ・猫ちゃんの場合は喘息や感染症による胸水などもあります なかでも気管・気管支虚脱は 老齢性の心臓病と品種も、年齢も同じような子がなりやすい病気で 同じかそれ以上に咳の原因としてよく見ます。 そして、この咳は薬で減らすことはできても、多くの場合はゼロになりません。 起きやすい品種も年齢も似通っているため、両方患っている場合もよく見かけます。 ただ、どっちが原因で咳をしているかによって、飲む薬が違います。 でも心臓の薬も呼吸器の薬も、合っていなくても咳が少し減ることはあります。 そこが難しいところ。 「重度なためこれ以上抑えることはできない」 なのか 「薬が合っていなくて治療出来ていない」 なのか…
熱中症
こんにちは 上野の森どうぶつ病院の 諌山です。 今週は暑い日が多かったので「熱中症」 についてです。 ちなみに風邪を引いた私は昨日院内でフリース着てました。 なんだかんだで、熱中症はこの時期が一番来院されます。 まだ「春」だからですかね。 真夏はみなさん気を付けているから逆に少ないですね・・・ 熱中症は体に熱がこもり過ぎるとなるのですが、以前のブログで「かかりやすい子の特徴と予防」 があったので、今回はかかるとどんな症状になるのか。をお伝えします。 まず熱中症とは体の体温を調節できる範囲を超えてしまった場合に起こります。 体温調節の基本は汗です。 ほとんど汗をかかない犬猫はこの時点で暑さに対して体温調節のできる幅が少ないですね。 犬は汗の代わりにハッハッハッハと口を開けて息をすることで対処しますが全身で汗かくほどは対応しきれないので 人間がダラダラ汗をかく状況はすでに犬猫には危険です。 ちなみに、猫は口を開けて呼吸をすることを滅多にしません。 猫が口を開けて呼吸をしていたら本気で病院に行くことを考えてください。 軽い熱中症の症状として 下痢・嘔吐・ふらつき が見られます。 これ、すっごく多いです!! なんか下痢して~って来院されて、なーんにもその時には異常なくて。 お話をよくよく聞くと そういえば昨日散歩長めに行ったなぁ。とか そういえば昨日走りまわって疲れたのかなぁ。足がもつれてて。とか 熱かった日のあとに「なんか調子悪い」っていう状態になります。 これ!すでに熱中症になってます! また、熱のこもり易い「太ってる子」「鼻ぺちゃな子」「喉が弱い子」は口でのハッハッハッハがきちんと出来ないので、より危険です。 この子たちは、通常の熱中症の症状とは別に、気道の閉塞を起こす危険があるんです。 これが、ハッハッハッハの状況の気管の中。 ちょっと壊れた傘 (細胞) 治さないといけないですね。 治すためにはちょっと腫れます。 気管の腫れを筒とアナゴに例えてみましょうか。 筒がちょっと狭くなってしまいました。 風邪とかで喉が腫れて息苦しいのは単純に狭くなるせいもありますね。 気道が狭くなる原因がある子は、同じ量の空気でも狭い所を通るので暴風な状況。 暴風だと、ますます腫れてしまうのでアナゴが増えます。 これは・・・通り道ないですね。 こうやって空気の通り道が腫れで塞がれて、いつかは通行止めになります。…
膝蓋骨脱臼の膝を考える
こんにちは 上野の森どうぶつ病院 の諌山です。 今回は病気のお話。 それも私の専門の心臓病とは程遠い、整形外科のお話です。 膝蓋骨脱臼 いわゆる「パテラ」 といわれる病気です。 膝のお皿がズレ (脱臼) る病気のことですが、膝のお皿 (膝蓋骨) が英語で「patellar (パテラ) 」なので、膝蓋骨脱臼がパテラと略されているようですね。 なぜ、こんな話を書こうかと思い立ったかというと。 わたしもパテラ患者だからです。 (笑) 小型犬に多い病気ですが、背の小さい人間にも当てはまるんですかね? そりゃ~もう、走ったあとケンケンしてしまう犬の気持ち。 痛いほどわかります。 ついこの間は痛すぎて夜起きてシップ貼りました。 しかも、段々後から痛むんですよね~・・・ 気をつけてあげてください。 さて、具体的に何がどうなっているのか。 なんで痛いのか。 私の膝の話と、みなさんのワンコのお話を交えて説明させていただきます。 (また長くなりそうですね。) まず、膝は凹の形をしている関節のへこみ上に、膝のお皿 (膝蓋骨:シツガイコツ) が乗っかっています。 その見た目のとおり、この凹みを大腿骨の滑車と呼びます。 足の曲げ伸ばしをするたびに、この滑車の上をお皿が滑るように上下に動いてスムーズに関節が動きます。 イメージはこんな感じ。 この関節部分はクッション性がよく、滑りが良いので、この凹み部分をお皿が上下する限りは痛みなどは起きません。 実際の骨でいうとこれですね。 ですが。 小型犬はこの滑車の凹の溝が浅い子が多い様です。 (他にもいろいろありますが・・・) 溝が浅いと、ツルッとお皿が溝の外へ。 関節の外に出たらそこは骨のザラザラ面。 膝の曲げ伸ばしの度にお皿も骨も摩擦が激しく、滑りが悪くて痛みが起きます。 イメージとしてはこんな感じ。 あいたたたぁ・・・・…