膝蓋骨脱臼の膝を考える

こんにちは
上野の森どうぶつ病院
の諌山です。
今回は病気のお話。
それも私の専門の心臓病とは程遠い、整形外科のお話です。

 

膝蓋骨脱臼 いわゆる「パテラ」 といわれる病気です。

 

膝のお皿がズレ (脱臼) る病気のことですが、膝のお皿 (膝蓋骨) が英語で「patellar (パテラ) 」なので、膝蓋骨脱臼がパテラと略されているようですね。
なぜ、こんな話を書こうかと思い立ったかというと。 わたしもパテラ患者だからです。 (笑)

 

小型犬に多い病気ですが、背の小さい人間にも当てはまるんですかね?
そりゃ~もう、走ったあとケンケンしてしまう犬の気持ち。

 

痛いほどわかります。
ついこの間は痛すぎて夜起きてシップ貼りました

 

しかも、段々後から痛むんですよね~・・・ 気をつけてあげてください。
さて、具体的に何がどうなっているのか。 なんで痛いのか。

 

私の膝の話と、みなさんのワンコのお話を交えて説明させていただきます。
(また長くなりそうですね。)

 

まず、膝は凹の形をしている関節のへこみ上に、膝のお皿 (膝蓋骨:シツガイコツ) が乗っかっています。
その見た目のとおり、この凹みを大腿骨の滑車と呼びます。

 

足の曲げ伸ばしをするたびに、この滑車の上をお皿が滑るように上下に動いてスムーズに関節が動きます。
イメージはこんな感じ。

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この関節部分はクッション性がよく、滑りが良いので、この凹み部分をお皿が上下する限りは痛みなどは起きません。
実際の骨でいうとこれですね。

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ですが。

 

 

小型犬はこの滑車の凹の溝が浅い子が多い様です。 (他にもいろいろありますが・・・)
溝が浅いと、ツルッとお皿が溝の外へ。
関節の外に出たらそこは骨のザラザラ面。
膝の曲げ伸ばしの度にお皿も骨も摩擦が激しく、滑りが悪くて痛みが起きます。
イメージとしてはこんな感じ。

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あいたたたぁ・・・・
実際はこんな感じ。

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何とな~くイメージで関節炎が出来そうな感じ、伝わりますか?
それだけではありません。

 

お皿は靭帯で上下から引っ張られているため、
正しくない位置にずれたお皿によって靭帯が突っ張って足が正しい方向に向かないことも。
特に子犬の時にこれが起きると、骨が引っ張られて変形します。

 

膝蓋骨脱臼の程度は4段階に分かれていて、

グレード1
膝蓋骨を指で押すと外れるが、離すともどる
グレード2
膝蓋骨を指で押すと外れるが、屈伸運動や押して正しい位置に戻る
グレード3
膝蓋骨は既に外れているが、屈伸運動や押して戻すことによって正しい位置に戻る。でもすぐ外れる
グレード4
膝蓋骨は既に外れていて、押しても正しい位置に戻せない。

 

っていうザクッとした分類で、一般的によく見るのはグレード1~2の子です。
で、ここからが問題で うちの子も言われたけど、どうすればいいのよ
っていう話ですが、先生の考え方で結構違います
なので、当院の場合を書きますね。
明らかに骨が変形しているとか、成長期にグレード3以上とか、大きくなる犬種で若いときに発見とかの場合は 歩けなくなる可能性があるため、早めに手術の話が出てきますが
すご~く多いのはグレード1~2。
しかも小型犬。で症状がない。
小型犬って体重が軽いから困らずに一生過ごせることが多いんです。
しかも犬は前足でも体重を支えますしね。
なので教科書には「症状に応じて」って書いています。

 

当院の場合は痛みが頻繁に起こらなければ、手術はあまり勧めません。
繰り返す痛みや、左右の筋力に差が出てきたりといった長期的な問題に発展する可能性が高い場合は手術をお勧めします。
もちろん、気は使ってください。

 

膝蓋骨が外れる機会が多いほど、関節炎も起きますし 膝には靭帯がいろいろあります。
膝が正しい方向に曲がらないと、靭帯が正しい方向に引っ張られない。
変な方向に引っ張られると靭帯は切れてしまいます

 

なので「前十字靭帯断裂」が併発しやすい病気です。
自分で膝に負担来るな~と思うものは
ズバリ 「捻じれ」「体重」「ジャンプ」「スクワット」 ですね。
昔やんちゃだった頃にスノーボードで大きいジャンプ台からジャンプして、捻じって着地して・・・悶絶しました。
痛みのあまり歩けず、スノーボードをソリにして引っ張ってもらった覚えがあります。
若気の至りですね。 (遠い目)

 

反復横跳びとかきっともう出来ないだろうな~・・・
階段の下りとかも、上るときよりも膝曲げるじゃないですか、あれ痛いんですよ~

 

そう考えると、ソファーから走って飛び降り、スライディングしながらボールを捕まえて戻ってくる・・・ な~んて絶対無理ですね。

 

私なら絶対夜中にシップ貼らないといけない炎症が起きます。
ということで、若くてまだ症状がないからと侮ってはいけません。

 

私の様にある日、悶絶して病院に駆け込むことになるので生活を注意してください。
特に、ワンコの場合は「痛くなりそうだから止めておこう」ということがなかなか無いので、飼い主さんがしっかり管理してあげることが大切です。

 

自分の子はグレードいくつなの?
時々痛いようだけど、手術の方がいいのかしら?

 

などなど。ご質問があればお気軽にご相談ください。

 

そろそろ心臓病についても書かないといけないですね。
宿題が増えてきました。ネタがないよりはいいですね。
上野の森どうぶつ病院より獣医循環器認定医諌山がお送りしました☆

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