犬と猫の心臓腫瘍

こんにちは

上野の森どうぶつ病院

獣医循環器認定医の諌山です。

 

最近めっきりブログの更新率が下がっておりまして、楽しみに読んで頂いていているのにすみません。

 

 

本日は心臓の腫瘍のお話。

 

腫瘍は体のどこにでも出来るんですが、心臓も例外ではなく出来ます。

 

犬猫の心臓の腫瘍は残念ながら悪性が多いです。

良性はわずか2%と言われています。

人では良性が多いみたいですけどね。

 

心臓は全身の臓器を巡る血液のポンプの役目をしているため、転移性の腫瘍もあります。

原発性の腫瘍もあります。

 

一番代表的なものが

血管肉腫という悪性の癌。

これは非常に極悪で、本当にヒドイ悪者で、診断するのが悲しくなるガンです。

 

「血管肉腫」という名前の通り、血管のガンなのでお腹の臓器からも発生します。

非常によく聞くのは脾臓の血管肉腫です。

脾臓や肝臓にできて心臓に転移する場合と、心臓自体から原発する場合とありますが、この腫瘍の悪いところは

なにより

 

長が早いという所です。

 

これが非常に厄介で

1)成長が早い故に転移が早い

2)成長が早い故に脆く、破れて出血する

 

大型犬に比較的多く、見つけたときには出血してショック症状を起こしていて既に転移もある。

半年前にはなにも無かったのに!!!

 

なんてこともよくあります。

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心臓にできた場合は心臓がレントゲンでパンパンに膨らんで見えて、超音波を見てみると心臓の周りに水が。

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心臓の周りに水があると、心臓が血液を貯められないため針で抜く必要があります。

 

水は腫瘍からの出血が原因のことが多く、抜いてもまた貯まってしまいます。

抗がん剤が効けば数ヶ月の延命効果が期待できます。

腫瘍の出来ている位置によっては取ることも検討しますが、ほとんどの場合は難しい上に、

全身の転移も考えて治療するべきものなので、心臓のみだけの問題じゃないです。

治療をどこまでするのか。考え方は人それぞれ。

 

よ~くよ~くよ~くよ~くよ~くよ~く獣医さんと相談してもらった方がいいですね。

 

 

次に多いのは

大動脈化学受容体腫瘍という癌

大動脈小体腫瘍やケモデクトーマともいいます。

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これは文字通り大動脈のそばにできるものなのですが、血圧センサーのガンですね。

 

鼻ぺちゃの品種に多いといわれていて、私が見たことある子は全員鼻ぺちゃでした。

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シーズーも鼻ぺちゃの仲間です。

 

悪性なんですが、

成長がゆっくりの癌

なので年単位で大きくなって問題になることが多いです。

ただし、ゆっくり成長するのでず~っと隠し持っていて、気づいた時にはすごい大きいものが!なんて子もいます。

 

この腫瘍が問題になるときは

1)心臓の周りに水がたまったとき

2)段々成長して、周りの臓器を圧迫or破壊し始めたとき

 

心臓の周りに水がたまるのは以前のブログでお話ししました。

その水が心臓を圧迫して低血圧になってしまったり、お腹に水がたまったりする事があります。

その場合には水がたまるスペースを無くすために、心臓の周りの膜を切除することで一年以上寿命が変わります。

一緒に腫瘍を取りたいのですが、悪性なので血管の中に入り込んでいて取ることは難しいです。

 

周りの臓器を圧迫し始めたときはそれに伴う障害をそれぞれ治療します。

多いのは心臓の変形ですが、食べ物が食べにくくなったりもします。

 

根治の方法はなく、一般的な抗がん剤は効きません。

放射線治療や分子標的薬の報告がいくつかあります。

これも費用や効果の問題がありますので

 

よ~くよ~くよ~くよ~くよ~くよ~く獣医さんと相談してもらった方がいいですね。

 

 

その他の心臓腫瘍としては

 

リンパ腫

異所性甲状腺癌

中皮腫

などがあります。

 

残念ながら、挙げているものはすべて悪性です。

猫ではリンパ腫が非常に代表的ですね。これも全身の問題として治療します。

良性2%の中には粘液腫など人で多いものがありますが、私は見たことないですね…

 

そして、どれも手術してどうにかなるものではありません。

全身の循環を司ってる心臓ですから。

癌も全身との関連を考える必要があります。

現状と今後について。

 

よ~くよ~くよ~くよ~くよ~くよ~く獣医さんと相談してください。

 

 

 

 

根治できないものを、どうやって付き合ってゆくか。

 

 

全力で立ち向かう、何もしない、緩和治療、東洋医学、サプリメント、再生医療・・・

腫瘍に対する考え方は本当に人それぞれです。

ただし、共通点は向き合っているものが「何か」「どうなってゆくのか」を明確にしてこそ選択肢が選べるんだと思います。

 

やっぱりそこは

よ~くよ~くよ~くよ~くよ~くよ~く獣医さんと相談してください。

 

 

 

いっつも思いますが、治療方針を動物は選択してくれません。そして選択に正解も絶対もありません。

 

でも、一緒に過ごしてきた相棒が悩み抜いて選んだ選択肢なら「いいよ」っていってくれると思いませんか?

 

自分の相棒を見て、抱っこして、撫でながら悩んでください。

 

出た答えに間違いはありませんから。そこだけは「絶対」です。

 

 

 

 

日本獣医循環器認定医

諌山でした。

 

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